「命短し、恋せよ乙女」
雪の夜、志村喬がブランコに乗って歌います。
今回の作品は黒澤明監督の名作の一つ、「生きる」です。
封切りは1952年。
東宝創立20周年記念映画で1954年には第4回ベルリン国際映画祭市政府特別賞を受賞しています。
志村喬が演じるのは市役所の無気力課長・渡邊勘治。
来る日も来る日も書類にハンコを押すだけ。
ある日渡辺課長、体の具合が悪いので病院に行きます。
そこで末期の胃癌にかかり余命いくばくもないことを知ってしまいます。
最初はショックで役所を欠勤し、やけくそでパチンコ屋やストリップ劇場やダンスホールで遊びまわります。
そんな中、市役所からおもちゃ工場に転職した若い女性・小田切とよに偶然巡り合います。
おもちゃ工場で生き生きと働く小田切。
刺激を受ける渡辺課長。
まだ死ぬ前にできることがある。住民から陳情を受けていた公園を造成します。
やくざからの脅迫を跳ね返し、頭の固い同僚や先輩を説得して。
公園が完成した日の晩、雪の中でブランコに乗って歌うのが「命短し」のゴンドラの歌です。
渡辺課長はブランコに乗ったまま果てました。
お通夜では住民がお焼香に来て、感謝の言葉を口々に述べます。
若い市役所職員は市役所のやり方を批判します。
お通夜の翌日、新しい課長が就任し、すぐやる課に変貌するかと思いきや、また怠惰なお役所仕事が続く。
そんなお役所仕事批判が盛り込まれた映画でした。
この作品の中であまり知られていない情報を一つ。
市役所からおもちゃ工場に転職した小田切とよは小田切みき(1930~2006)という脇役専門の女優さんなんですが、このかたチャコちゃんケンちゃんのチャコちゃんこと四方晴美のお母さんなんですよ。
チャコちゃんのお母さんは黒澤映画に出ていた。
え?そうなの?って感じですね。
嫌いな食べ物はお汁粉。
お汁粉を美味しそうに食べる場面があって、チャコちゃんママ、えらい苦労したそうです。