一掛け 二掛け 三掛け
仕掛けて 殺して 日が暮れて
橋の欄干 腰下ろし
遥か向こうを 眺むれば
この世は 辛い事ばかり
片手に線香 花を持ち
オッサン、オッサン、どこ行くの?
アタシは必殺仕事人
中村主水と申します。
「して、今日はどこのどいつを殺ってくれとおっしゃるんで?」
時代劇で隠密・暗殺者系の最高傑作とくれば、「必殺仕事人」です。
新五捕物帳のように庶民が苦しめられるのは同じですが、非業の死を遂げる庶民もしくは遺族からなけなしのお金を貰った闇の殺し屋が悪人を闇から闇へ葬り去るのが必殺シリーズです。
必殺シリーズにはほぼ共通したお約束があって、頼み人が悪人で邪魔な人間の口封じを依頼すると依頼人が消されるのです。
よくあるパターンは金持ちのヤクザが長屋を潰して、跡地に曖昧屋のようなフーゾク施設を作ろうとする。
反対する住民はヤクザの子分に皆殺しにされる。
生き残った人が奉行所に訴えると奉行と与力がズブズブで事件を揉み消しちゃう。
町外れの御堂か地蔵堂にお金を置いて恨みを晴らしてくれと頼むと必ず恨まれた相手は死ぬって噂が流れている。
それでなけなしのお金を御堂に置いて頼むと翌朝みんな悪者が暗殺者に消されている……って感じのものですね。
(必殺仕掛人)
必殺シリーズ自体は池波正太郎の仕掛人・藤枝梅安を原作とした「必殺仕掛人」から始まりました。
必殺仕掛人を始めた1972年当時はフジテレビの木枯らし紋次郎が大人気!
対抗しようとした朝日放送は東映時代劇映画からの流れとは全く違う作品として闇の殺し屋を主役にした斬新な企画として必殺シリーズをスタートしました。
テーマソングも紋次郎がフォークなのに対し、マカロニウェスタン調に。
これが大当たりして、第二弾以降は原作版権の費用節約のため、朝日放送内部で企画するオリジナル作品に移行しました。
(中村主水)
そのオリジナルキャラクターとして、家や職場でいびられる窓際族サラリーマンのような人物として中村主水が生み出されました。
必殺仕置人で初登場。以降連続ドラマレギュラーとして合計15作に中村主水は登場しました。
主水がトメから正規の主役になったのは新・必殺仕置人から。
そして大ブレイクしたのが今回のテーマ「必殺仕事人」です。
前作の「翔べ! 必殺うらごろし」が霊能力を持った行者(中村敦夫)が死者の恨みの声を聞いて、晴らしに行くというオカルト色のキツい作品でした。
視聴率が取れず、必殺シリーズには打ち切り勧告が出ました。
私も観ましたが、テレビ時代劇ドラマ向きのネタではなかったですね。
どっちかっていうと、深夜アニメ向きの話題でした。
朝日放送は翔べ!必殺うらごろしを見直して、原点の必殺仕掛人のスタイルに戻し、人気のあった中村主水を主役にし、最後の必殺シリーズとして「必殺仕事人」を世に送り出しました。
これが当たって、第9シリーズまで作られる傑作となりました。
主水以外の主な登場人物は次のとおり。
[殺し屋・連絡係・元締]
畷左門(伊吹吾郎)
必殺仕事人①に登場した浪人者。29話で刀を売り、頭を坊主にしておでん屋になる。
(坊主のおでん屋になってからの技。逆エビ固め背骨折り)
暗殺方法は浪人時代は刀で斬っていたが、おでん屋になった途端に逆エビ固め背骨折りに変わった。
かんざしの秀(三田村邦彦)
必殺仕事人①、新・必殺仕事人②、必殺仕事人Ⅲ③、必殺仕事人Ⅳ④、必殺仕事人・激突⑨の他、スピンオフ作品で秀主演の必殺まっしぐらに登場する。
かなり熱い性格で人がよく、情に流されやすいので、主水によく注意される。
暗殺方法は悪人の首筋によく尖らせた銀の簪をグサッ!
必殺仕事人①の26話まで。
秀と仲良しの情報屋だったが、自身が殺人の被害者となってしまった。
鹿蔵(中村鴈治郎)必殺仕事人①
得体の知れない不気味な元締。
勘定奉行と裏で繋がっていて、八王子に左遷されていた主水を呼び戻したのは鹿蔵だった。
17話で旅に出るが、病気だったようだ。
三味線弾きのおとわ(山田五十鈴)
必殺仕事人①
鹿蔵の女房で、鹿蔵が旅に出ると、代わりの元締になった。
仕事人の掟を守れない秀を殺そうとするし、主水をボロクソに言うし、かなり怖い婆さんでした。
自分が手にかけた相手が生き別れの妹だと知ると、置き手紙をして、いずことなく消え去りました。
同じ山田五十鈴が演じるおりくが②〜⑤に出てきます。
同じ三味線弾き。
同一人物の変名なんですかねぇ?
六蔵(木村功)必殺仕事人①
木更津の元締。
おとわのあと、仕事人グループをまとめる。
木更津の庄屋で昔仕事人で鹿蔵の仲間だったという設定。
普段木更津に住み、たまにしか江戸に出てこないので、滅多に画面に登場しないレアキャラだった。
おかよ(鮎川いずみ)必殺仕事人①〜⑥
木更津の元締の連絡係。
なんでも屋のおかよになるのは新・必殺仕事人②から。
江戸の質屋上総屋で働く。
人はいいが、がめつい。
おしま(三島ゆり子)必殺仕事人①
おかよと同じ木更津の元締の連絡係。
上総屋の店番。
男好きで「許せないわぁ」が口癖。
三味線屋の勇次(中条きよし)新・必殺仕事人②〜④の他、必殺仕切人のグループにも参加している。
武器は三味線の糸。
悪人の首に引っかけて吊る。
悪人に厳しく、女子供には優しい。
主水、秀と対立することが多い。
せんとりつの三味線の師匠をしていてよく中村家に出入りする。
三味線屋のおりく(山田五十鈴)新・必殺仕事人②〜⑤に登場。
武器は三味線のバチ。
勇次の母親ということになっているが、実はおりくが仕事で殺した相手に赤ちゃんがいたことから育てていた。
実は勇次の仇であることを密かに悩んでいる。
西順之助(ひかる一平)必殺仕事人③〜⑥
蘭方医の息子で西洋医学所を受験する受験生で必殺仕事人Ⅲ③ではエレキテルの電気を貯めるライデン瓶、つまりスタンガンを武器にしていた。
仕事人唯一の十代の殺し屋。
必殺仕事人Ⅳからは親にライデン瓶を捨てられたため竹製の大砲を武器とする。
ちょんまげは付いているけど全くの学生アルバイト。
必殺仕事人Ⅴ⑤の最終回で西洋医学所に合格し、長崎に旅立つ。
必殺仕事人V・旋風編⑦で歯科医になって戻ってくるが、最終回で持っていた火薬に引火、爆死する。
花屋の政(村上弘明)必殺仕事人Ⅴ⑤〜⑧
かんざしの秀と同様に正義感の強い熱血タイプ。
当初は折り割った枝を悪人の延髄に突き刺していたが、激闘編⑥から鍛冶屋に商売替え。
武器も組み立て式の手槍になった。
組紐屋の竜(京本正樹)必殺仕事人Ⅴ⑤〜⑥
組紐屋をやっているが、実は抜け忍。
身軽なので偵察も行う。
武器は組紐。
三味線屋の勇次のように首に引っ掛けて吊る。
はぐれ仕事人壱(柴俊夫)必殺仕事人Ⅴ激闘編⑥
住所不定の遊び人。登場時に十手持ちを装っていた。
はぐれ仕事人貳(梅沢富美男)必殺仕事人Ⅴ激闘編⑥
役者崩れの仕事人で女形の姿になる。
はぐれ仕事人参(笑福亭鶴瓶)必殺仕事人Ⅴ激闘編⑥
上方から来たビードロ売りの男。関西弁を話し、仕事の時だけ眼鏡を外す。
[主水の家族、上司]
「婿殿!」主水をいびる鬼姑。
いつまでたっても娘のりつが妊娠せず、跡取りができないことを気にしている。
中村りつ(白木まり)
せんの娘で主水の嫁。
主水は婿養子。
早く子供ができるようにとときどき主水に生卵やトロロや赤マムシなどを食べさせようとする。
母と娘でせんりつ(戦慄)コンビとなるが、せんがいないところでは急に優しくなったり、主水に甘える一面も。
田中熊五郎(山内としお)
新・必殺仕事人②から登場。
必殺仕事人①のときの筆頭同心はかなり影が薄かったが、この筆頭同心はキャラ濃すぎ!
オネエ言葉のくせにオネエ扱いされるとブチ切れる。
また、本物のオネエに抱きつかれたときは悲鳴を上げてパニクっていた。
これら個性的な脇役たちを束ねて存在感を示していたのが中村主水です。
ヘラヘラしていても目が笑っていない。
仕事人同士だと冷徹。
ただいるだけで画面が引き締まる。
主水役の藤田まことは名優ですよ。
目と背中でしっかり演技してます。
必殺仕事人は藤田まことの名演技に支えられて人気を博したと思いますよ。