昔々、津山藩にとてもエロい殿様がいました。
家臣に「余の妾にそなたの妻を差し出せ」と迫るのです。
(エロ殿様)
あるとき家臣の森千之助に妻を差し出させようとしたら、思いっきり断られました。
(本作の主人公・楢井俊平。デニムの着物が斬新。デニムの着物はのちに必殺仕事人の簪の秀の衣装にも使われました)
怒ったお殿様は森の同僚で親友の楢井俊平(近藤正臣)に「森が不正を行った。成敗せよ!」と命じ、楢井は藩命により、森千之助を斬りました。
楢井はしばらくして森の不正とは殿様に妻を差し出すのを断った真実を知ってしまう。
(森千之助の妻・前半で殺されてしまう。それにしてもこの方が後の南極おばさんになるとはお釈迦様でも気が付くメェ!)
激怒した楢井俊平は森千之助の妻・菊(和泉雅子)と息子の太一郎を連れて、江戸へ出て殿様の不行状を訴えることにした。
殿様は松平はずしと称して江戸までの道の要所要所に手配書を送り、楢井俊平と菊を捕らえさせようとした。
(森千之助の父嘉兵衛(佐藤慶)と異母弟の森伝八郎(岸田森)をエロ殿様は追手として差し向けた。仇として…)
追手に行く先々で狙われてその度に楢井は追手を斬り、先へと進んだ。
14話辺りで菊は殺され、太一郎は何処ともなくさらわれる。
15話からタイトルが「斬り抜ける・俊平一人旅」に変わり、楢井の目的は大名制度そのものの破壊というテロに変わります。
16話で駿府城代暗殺。
最終回の20話で殿様暗殺に及びます。
(最終回の殿様暗殺)
放映期間は1974年10月3日から1975年2月13日まで。
刀で斬れるのは2人までで3人目は刃がこぼれ、血糊で滑って斬れないって妙な部分はリアルでしたが、全くの不人気作品でした。
一応おしどり右京捕物車の後番組で朝日放送制作で必殺スタッフが作ってましたが。
(実際の津山城。姫路城並みのデカい城でした)
実際の津山藩は代々殿様が夭逝し、その度に殿様の縁戚の男の子を次の殿様にしていました。
そのため、お殿様は参勤交代免除。
乳母や生母と江戸屋敷で暮らしました。
そんな藩でセクハラも何もあったもんじゃありません。
いよいよ殿様にする子供が尽きて、取り潰し?となったとき幕閣が助け船を出しました。
家斉のエッチで子供が男子26人、女子27人も出来てしまってました。
男子26人の誰か一人を殿様にしたら、取り潰しは無し。
加増もすると提案したのです。
こうして津山藩は家斉の息子を養子にしました。
この新しい殿様松平斉民は割と出来た人で、蘭学普及と教育に力を入れました。
(明治時代の松平斉民。14代将軍選定のとき、家斉に血が近いことで、この方も将軍候補でした。しかし、臣下の藩に養子に出されたという理由で将軍になれませんでした)
中間や足軽の子供たちを積極的に受け入れ、出来の良い子は江戸へ送って蘭学を学ばせました。
結果明治前半の医者と学者に津山出身が多くなりました。
これじゃエロ殿様なんて出てきませんね。
話を戻しまして、斬り抜けるがウケなかったのは暗すぎるからですね。
陰湿でジメジメしてカタルシス無し。
これでは視聴者に嫌われるはずです。
ここまで書いてきて成功する時代劇に共通するポイントがあることに気がつきました。
それはカタルシス。
スカッとさせること。
極悪人を公権力が裁くか、暗殺者が闇に葬るかする。
(なかなか味わいのあった主題歌)
コレがあやふやなモノはウケないですね。
主題歌はなかなか良かったんですけどね。
出だしがちょっと「ワシントン広場の夜は更けて」みたいで……。