「ハイ、こちら捜査一課。何?矢追二丁目で殺し?……ボン、矢追二丁目で殺しだ!直ぐ行け!」
ボスが電話を受けると、直ぐに近くのデカを無線で呼び出す。
するとグギャギャギャ!っとクルマがUターン!
今回の思い出のドラマは「太陽にほえろ!」です。
1972年7月21日から1986年11月14日まで実に14年間も放映された刑事ドラマの金字塔です。
それまでの刑事ドラマはドブネズミ色のスーツを着たおじさんたちばかりが出てくるものでしたが、若くてファッショナブルな刑事が大勢出てきて、事件に体当たりでぶつかっていくところが斬新でした。
(ボス)
責任は俺が取る。
行け!と言わんばかりに若手刑事を見守るのが石原裕次郎演じるボスこと七曲署捜査一係長藤堂俊介警部と補佐役で主任の露口茂演じる山さんこと山村精一警部補です。
(山さん)
この二人の存在感が凄かった!
なんたって台詞なしでブラウン管に映るだけで画面が引き締まるんですから。
終盤、石原裕次郎が病気で入退院を繰り返し、山さんが殉職して地井武男と交代するなどなんだか話がグジャグジャになって、パート2に続いた挙句、後番組のジャングルと混っちゃったような感じになりました。
太陽にほえろ!が独特の雰囲気を出して味わい深かったのは1970年代か80年代アタマくらいまでですかねぇ。
群像劇でドラマ全体の主役はいません。
毎回捜査一係の刑事一人一人にスポットライトが当たります。
ではボス、山さん以外の太陽にほえろ!黄金時代の刑事たちを紹介しましょう。
[ベテラン・中堅]
長さんこと野崎太郎巡査部長(下川辰平)
ボスより警察官生活が長いから長さんではなく、部長刑事だから長さんです。
交番勤務からの叩き上げ。
見た目定年間近の老刑事ですが、太陽にほえろ!開始時は47歳でした。
老けすぎですよねェ?
ゴリさんこと石塚誠巡査部長(竜雷太)
ごり押しの石塚でゴリさんになったのだが、若手からはゴリラと言われてその度にキレていた。
射撃の名手で強盗やテロの立てこもりで狙撃を頼まれていた。
新人刑事の教育係。
殿下こと島公之巡査(小野寺昭)
優しく品があり、甘いマスクだったところから殿下とあだ名される。
手先が器用で爆弾処理や複雑な機械操作をよく任される。
[個性的な若い刑事たち]
マカロニこと早見淳巡査(萩原健一)
ノータイにスーツ、ロン毛という出で立ちからマカロニウェスタン風だと殿下にからかわれてマカロニになった。
万事破天荒で止むに止まれぬ事情で犯罪に走る若者に同情的。
最後は立ちションをしているとき、背後からレインボーマンに刺されて死亡。
拳銃を使わず空手で暴れる。
ゴリさんも大概バイオレンスだったけど、ジーパンは輪をかけてバイオレンスでハードボイルドなヤツでした。
取り調べでゴリさんとジーパンがコンビにはあまりならなかったと思います。
あの二人じゃ容疑者が白状する前にボッコボコですよね。
最後は身体を張って守った相手に射殺されました。
「なんじゃい、こりゃ」は松田優作の物真似の定番になりましたね。
テキサスこと三上順巡査(勝野洋)
トレードマークのテンガロンハットからテキサスと呼ばれる。
いがぐり頭の九州男児で正義感が強く、真面目。
最後は拳銃密造グループのアジトに一人で乗り込んで蜂の巣にされた。
「逮捕する!銃を捨てろ!捨てるんだ!」
バーン!
「うわっ!」
子供の頃、銀玉鉄砲持って泥巡(泥警ともいう。警察官チームと泥棒チームに分かれてやる鬼ごっこですね)やってるとき、このシーンを真似しませんでしたか?
ボンこと田口良巡査
大阪生まれのボンボン。
人が良く優しい。
当初は叔母と同居していたが、その後叔母が大阪に戻り、一人暮らしになったが、のちにロッキーが赴任してくると、アパートの部屋をロッキーとシェアする様になる。
最後は事件関係者の女性を庇って撃たれ、公衆電話から捜査一係に電話をして絶命。
スコッチこと滝隆一巡査(沖雅也)
英国スーツに英国タバコ、紅茶を愛飲するキザっぷりからゴリさんが「このスコッチ野郎!」と吠え、それがあだ名となったなった。
一匹狼で冷徹。的確な捜査能力を持っているが、先輩刑事が目の前で殺されたのがきっかけで優しさを捨てたのだった。
一度は他所に転勤となったが、しばらくして出戻ってきた。
過去に胸を撃たれた後遺症で拳銃密造グループを逮捕後、喀血。
病院で息を引き取った。
ロッキーこと岩城創(木之元亮)
警視庁機動救助隊から転任してきた山男。
ロッキー山脈登頂に憧れているところからロッキーなるあだ名がついた。
彫りの深い顔にモジャモジャの髭面でイエスキリストみたいな風貌になっているところが特徴。
木之元亮は元々は髭を生やしていなかったが、たまたま無精髭の写真がプロデューサーのところに行っていて、それを見つけたジーパン松田優作が推挙したのがきっかけで髭面の刑事が誕生した。
ロッキーは念願叶ってロッキー山脈に行ったところ、容疑者を追ってロッキー山脈にやって来た七曲署捜査一係の面々と出くわし、合流。
犯人を追い詰めるも動植物を庇ったところを撃たれて絶命。
遺骨はロッキー山脈に散骨された。
刑事があだ名で呼び合う独特の雰囲気は人気を博しました。
(ドルフィンデカ)
こちら亀有公園前派出所で海パンデカやドルフィンデカなどの珍妙な刑事が現れたのはたぶん太陽にほえろ!のパロディですね。
こんな大人気の太陽にほえろ!に1979年に強敵が現れます。
武田鉄矢主演の「3年B組金八先生」を筆頭とする学園モノドラマ桜中学シリーズです。
1970年代末頃から、ヤンキーが学校を破壊する校内暴力、今考えると単なるパワハラでしかなかった理不尽で厳しすぎる校則、暴行傷害虐待の類いでしかなかった教師の体罰やイジメが社会問題化しました。
そんな時代背景から世間の関心は凶悪犯罪から学校問題にシフト。
学園モノに人気が集まりました。
太陽にほえろ!も継続は力なりで新しい刑事をドンドン登場させましたが、視聴率低下は避けられませんでした。
ボスの石原裕次郎の入退院も相まって、飽きられ、時代に取り残されちゃったんですね。
個人的意見ですが、太陽にほえろ!はロッキーの殉職辺りで終わるべきでした。
ロッキー以降の新しい刑事役のタレントを集めて、校長と学生の板挟みになって苦悩する若手教師たちのドラマでもやったら、多少は視聴率を稼げたんじゃないでしょうか?