レトロ万華鏡

昭和レトロなものいっぱいのブログです。

思い出のドラマ時代劇編21 番外編 新八犬伝

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ドンドンドンドンドンドン…

「我こそは玉梓が怨霊〜!呪ってやるぅ!祟ってやるぅ!」

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辺り一面暗くなり、文楽人形のガブみたいな化け物の人形が画面いっぱいにドーンと現れる。

何? ドラマじゃねぇだろ!って?

アニメでもバラエティでもないですね。

人形劇です。

しかもめちゃくちゃブームになった。

私もどこで取り上げるか考え込んじゃいましたよ。

この作品はチョンマゲをマイブームにした決定的なもの。

外したくない。

考えた末に時代劇ドラマの番外編に持ってきました。

放映期間は1973年4月2日から1975年3月28日までの2年間。

毎日月曜日から金曜日の夕方6時半から15分間の番組で全464話。

元々は1年の放映予定でしたが、ブームになって、2年に引き伸ばされたのでした。

原作は勿論曲亭馬琴の名作「南総里美八犬伝」ですが、それでは2年に引き延ばすと尺が足りないので、曲亭馬琴のほかの小説も入れ込んでしまいました。

そのため、本来のストーリーとは関係ない小栗判官、照手姫や沖縄の盗賊ウンタマのギルなんてサブキャラやサブストーリーが加わってます。

あらすじはこんなところ。

応仁の乱後まもなく。

今から五百数十年前の戦国時代初期、室町時代後期のこと。

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(中央が里見義実)

安房の領主里見義実は隣国の安西景連に攻められ、危機を迎えた。

もはやこれまでと思ったとき、里見義実は牡丹の花の模様のある白い愛犬「八房」に口走ってしまった。

「もし、安西景連の首を取って参ったら、そなたに娘の伏姫を取らそうぞ」

すると八房は姿を消し、暫くして安西景連の首を咥えて持って来た。

戦は里見義実の大勝。

安房国を守りきった。

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(伏姫。戦国時代というより江戸時代のお姫様の風情)

伏姫は「理由はなんであれ八房は敵の大将の首を取りました。私は約束どおり八房に嫁ぎます」

そう言って、八房と山にこもってしまった。

実は八房、里見義実の家臣・金鋺(カナマリ)大輔孝徳が成敗した性悪女・玉梓の霊が取り憑いた魔犬だった。

でもそんなことは誰も知らない。

金鋺大輔にとって伏姫は憧れのマドンナ。

それがよりによって犬に嫁ぐなんて!

アタマに来た金鋺大輔は弓矢を持って山に入った。

矢を二本射たところ二本共八房に命中する筈が一本逸れて伏姫を射抜いてしまった。

途端に伏姫の首にかかった数珠が弾け飛び、8匹の子犬の姿になった。

「私は8人の子供を残して参ります」

伏姫が死ぬ間際にこう告げると8匹の子犬は仁義礼智忠信孝悌の八つの珠に代わり八方に散って行った。

伏姫の8人の子供とは八犬士。

苗字に犬が付く。

身体のどこかに八房の模様とそっくりの牡丹の花の痣がある。

仁義礼智忠信孝悌のいずれかの文字の浮かぶ珠を持っている。

誤って伏姫を死なせた金鋺大輔は伏姫の霊を慰めるため、出家してゝ大(ちゅだい)法師となって巡礼の旅に出ます。

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(金鋺大輔は出家してゝ大法師に!)

しかし、もう一つ目的がありました。

それは八犬士全員を見つけ出して、安房国館山城に連れて行くこと。

そうして十数年の歳月が流れました。

すると……

日本各地から次々と八犬士が見つかったのです。

最初は自分が八犬士だとは分からず、すれ違いを繰り返したり、ときには八犬士同士で闘ってしまったり。

自らの武力と不思議な魔力を持つ珠で妖怪や悪人を退治したり、ときには捕まって奴隷として売られかけたり。

まるでアドベンチャーロールプレイングゲームみたいですね。

個性豊かな八犬士ですが、髪型もかなり個性的でした。

室町時代後期の武士のファッションとはだいぶ異なるのです。

室町時代の武士なら一休さん蜷川新右衛門みたいな格好になる筈なんですけどね。

人形デザインは辻村ジュサブローですが、歌舞伎か文楽人形をモチーフにしたようです。

遠山の金さんや銭形平次などとは明らかに異なるヘアスタイルに目が釘付けになり、私のヲタク魂に火が付きました。

小学5年でマイブームがちょんまげになりました。

スタートは人体実験。

ポニーテールの女の子に

「頼む。一回でいいから、ちょんまげさせてくれ!」

ボコってアタマ叩かれました。

人間はダメか。

じゃあ、紙粘土でカシラ作るしかねぇな。

リカちゃん人形くらいの頭を作る。

髪は黒い糸を木工ボンドでひっつけて固める。

母が余り布で着物も作ってくれて、最終的には里見義実人形になっちゃいましたが、これでちょんまげの時代変遷や形状を覚えました。

話をハ犬士に戻しましょう。

髪型も含めた八犬士は次のとおりです。

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犬塚信乃

孝の珠を持つ熱い男。

杉良太郎大川橋蔵ばりのイケメンで本作の主役。

月代を剃り、元結で結えた髪の先を長く後ろに垂らしています。

これは安土桃山時代辺りの武士のスタイルですね。

応仁の乱より新しいです。

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犬川額蔵

義の珠を持つ心優しいすらっとした優男。

髪型はまるで天草四郎ですね。

月代は剃ってますが、前髪を付けてます。

若衆髷という元服前の少年の髪型っぽいです。

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犬飼現八

信の珠を持つ丸顔の男。

信義に厚いざっくばらんな人。

奇妙な因縁で犬塚信乃と決闘をしたことがある。

十手と捕縛術に長けていて、江戸時代なら与力か同心をやってそう。

髪型は月代の辺りがモコッとなっていて、月代がボウボウに伸びた「むしり」みたいにも見えますが、癖毛とみると総髪でたぶさなので室町時代の武士スタイルで時代考証どおり……なんですかねぇ。

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犬山道節

忠の珠を持ち、弁のたつ男。

火遁の術が得意。

髪型、容姿なんですが、石川五右衛門みたいです。

盗賊ではないんですけどね。

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犬村角太郎

礼の珠持つ真面目人間。

髪型は犬飼現八に近い。割と室町時代の侍っぽいです。

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犬坂毛野

智の珠を持つアタマの回転の早い男。

変装を得意とし、女に化けるのが得意。登場時は女田楽の美少女に化けていた。

女装の達人って設定のせいで三日月眉にクリッとした目、卵型の輪郭で島田髷という江戸時代の若い女性のような髪型と人相にされてました。

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犬田小文吾

バチで叩く韓国のお琴。

それはコムンゴ!

何言ってんだか。

悌の珠持つ相撲を得意とする男。

優しさ勝負なら額蔵とツートップ。

八剣士二大デブキャラの一人。

髪型はかなりアレンジしてますが、力士ヘアの大銀杏っぽいです。

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犬江親兵衛

仁の珠を持つ怪力男。

大の大人二人を両脇に抱えて走るなんて軽い軽い。

八犬士二大デブキャラのもう一人。

髪型は額蔵と似た若衆髷。

現八と信乃の決闘もあったんですから、私としては親兵衛と小文吾で相撲を取って欲しかったですね。

親兵衛は多分強力な押し相撲。

小文吾は居反り(バックドロップ)みたいなとんでもない技を繰り出しそう。

どっちが強いか?

わっかりましぇ〜ん!

個性的な八犬士。

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(悪女船虫)

行手を阻むのは玉梓が怨霊と玉梓が怨霊が取り憑いた性悪女の船虫、仲間のさもしい浪人網乾左母二郎、怨の珠持つ偽八犬士の犬崎新などの悪党たちと妖怪。

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(網乾左母二郎。浪人だけど月代を剃ってます。江戸時代の侍髷ですね)

これだけじゃ、ブームにはなりませんでした。

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坂本九の黒子ナレーター)

実は新八犬伝の影の主役は主題歌とナレーション担当の坂本九でした。

講談風七五調で難しい用語を分かりやすく、面白く紹介していました。

魑魅魍魎とか即身成仏入定仏とか閑話休題なんて表現は九ちゃんの解説がなければ覚えることはなかったでしょう。

顔出しはなく、丸に九の字の入った黒子スタイルで毎回登場していました。

歌に司会に忙しかったので、本人が黒子の出で立ちで出演することもあったようですが、ナレーションだけまとめて撮って、黒子はスタッフだったってことも結構あったようです。

これだけの名作大作人形劇でしたが、「天下御免」同様、この作品のビデオも消されていて、残っているのはスタッフが個人的に持っていた第1回、20回、86回、464回(最終回)の4本のみ。

なんてことしてくれたんだい!

ったく、NHKときたら。