山手の洋館というとそのランドマークになるのは外人墓地です。
明治維新のときの外国人貿易商人やお雇い外国人のお墓が並んでますが、アメリカ映画の墓地みたいな感じのところです。
観光や趣味で回るような場所ではないです。
鉄道ファンには縁のある方も眠ってます。
それがエドモンド・モレルの墓ですね。
エドモンド・モレル(Edmund Morel 1840~1871)は明治新政府が鉄道建設のために招聘した英国人鉄道技術者で彼の指揮のもと新橋ー横浜の鉄道が建設されましたが、激務がたたって開業式に臨む前に結核でわずか30歳で亡くなりました。
このお墓はJR東日本の鉄道記念物となってます。
このお墓の周辺にレトロな洋館はもちろん建っています。
民間所有のところと横浜市所有のところがあるのですが、今回は横浜市所有の建物を紹介しましょう。
エリスマン邸
フランク・ロイド・ライトの弟子でチェコ人建築家のアントニン・レーモンド(Antonin Raymond 1888~1976)が絹糸貿易商エリスマン氏の家として1926年に建てた洋館です。
アントニン・レーモンドは帝国ホテル建設のときにライトの助手として来日しました。
レーモンドはモダニズム様式の代表的な建築家ですが、コルビジェ風の四角四面の建物ではなく、どちらかというと水平性を強調する意匠のライト風建築の影響を受けたスタイルになっています。
木造2階建てで下見板張りですが、ラップサイディング(アメリカ下見)ではなく、下見板が重ならないドイツ下見になっていて、ちょっとヨーロッパ的な雰囲気です。
四角四面なスタイルを避けるため勾配の緩い寄棟スレート葺きの屋根が載ってます。
室内の椅子やテーブルなどの家具はレーモンド設計。
レーモンド夫人が日本人だったところから、浴室とトイレが別々になっています。
旧厨房部分は喫茶室になってます。
元は400m離れたところに建っていましたが、マンション建設で取り壊しとなり、解体した部材を横浜市が買い取って1990年に元町公園の現在の場所に移築、復元しました。
また地下室はレンタルスペースとして活用しています。
開館時間は9時半から17時まで。
休館日は第二水曜日と年末年始です。
山手234番館
外人墓地前の横浜市所有の洋館は2軒。1軒目はエリスマン邸ですが、2軒目がこちらです。
1927年に外国人向けアパートとして朝香吉蔵の設計で建てられたものです。
3LDKの部屋が4部屋入っていて、簡素な造りながら煙突、鎧戸、上げ下げ窓を備えた瀟洒なアパートです。
太平洋戦争後、米軍に接収されましたが、接収解除後も1980年ごろまで木造アパートとして使われていました。
1989年に横浜市が買い取り1987年に改修工事を行い、1989年から一般公開しています。
一階は往年の部屋を復元したコーナーと山手234番館の歴史を記したパネル展示を行っており、2階はギャラリーとして貸し出しています。
開館時間は9時半から17時。
休館日は第4水曜日です。
エリスマン邸と山手234番館のある元町公園には公衆電話ボックスもあるのですが、デザインが明治期の古い電話ボックスを再現したものになっています。
中の電話機は交換手接続の電話ではなく、普通の公衆電話ですけどね。